希望のない世界から

消化試合を生きる

神社にいた高校生カップルのこと

1、2年くらい前のこと。

最寄駅から自宅までの通勤路に小さな神社があって、毎日行きも帰りもその境内を通って通勤している。

いつの頃からか、帰りにその神社を通ると、一組の高校生カップルがいるようになった。

何十回とその光景を見たが、声を聴いたことがない。何かを喋っている様子はない。

ただべったりくっついて座っているのだ。

くっついて、というのは、肩を並べて座っているだけではなく、女の方が男の上に座っていることもある。

時間は夕方18時過ぎにいることもあれば、帰宅が21時になってもいたことがある。

恐らく長い長い時間、そこにいるのだろう。

夜遅く、すっかり暗くなると、女が男に跨って、男の方を向いて座っていることもある。

もちろん、抱き合っていることもある。むしろその方が多い。

男が仰向けに寝ていて、女が上に座っている時もある。

二人とも横になってくっついている時もある。

小さな神社で、別に物陰に隠れているとか、そういうわけでもない。

普通に近所のおじさんやおばさんが、その近くで参拝していることもある。

自分も彼らのものの5メートルとか、それくらいの場所を通り過ぎる。

しかし彼らは、世界には自分たち二人しかいないように、ただくっついたり、抱き合ったり、キスをしたりしている。

それが、多い時では週に平日だけで3日とか4日とか。

よくぞ飽きないものだ。

リア充は嫌いだし、人前でベタベタしている連中も嫌いだし、高校生がというのもコンプレックスを刺激するので、必然的にその光景も嫌いだった。

しかしあまりにも頻繁なので、もうこれは合法未成年露出AV作品を無料で見せてもらっているのだと思うことにした。

 

夏にベタベタし、秋もベタベタし、さすがに冬になると彼らはいなくなった。

物足りなさもあったが、やはり素直に不快だったのだ。いなくなると清々しい気持ちになった。

そうして寒い冬が過ぎ、もう彼らの存在も忘れかけた頃──春、彼らは再び現れた。

そこにいるのが当たり前のように現れ、まったく同じように抱き合ったりキスしたりしている。

ある種の感動を覚えた。

普通、飽きないか?

学校や休日はどうかわからないが、学校の帰りは毎日毎日神社の境内でイチャイチャしているだけ。

まあ恐らく繋がっていたこともたくさんあったのだろうが、それにしたって飽きないか?

性欲だけで繋がっているように見えたのだが、その実、体以上に心がしっかりと繋がっていたのかもしれない。

よかったね、おめでとう。

 

そうしてまた、1年生か2年生だった彼らは、2年生か3年生になっても、同じように神社の境内でイチャイチャする日々を送っていた。

季節は巡り、やがて再び彼らの姿を見なくなった。

いつの頃だったかは覚えていない。

秋の寒くなってきた頃だったろうか。

だから恐らく、別れたとかそういうのではないと思う。

そしてそれっきり、彼らの姿を見ることはなかった。

それが去年の秋だったのか、一昨年の秋だったのかも忘れてしまった。

ひょっとしたらまた春になったら現れるのかもしれないが、きっともう卒業したか、来春卒業するだろう。

神社の境内を通るたびに、時々彼らのことを思い出す。

色々と不愉快だった二人だが、あれだけ飽きもせず毎日毎日イチャイチャしている姿は、尊敬に値した。

どうかもっと高みを目指して、やがて公然わいせつ罪で捕まってほしい。