希望のない世界から

消化試合を生きる

『誓いのフィナーレ』についてあれこれ~京阪コラボとか奏のこととか

 今年の京阪電車と『響け!ユーフォニアム』のコラボのイラストは、左から、夏紀と優子、緑輝と奏、久美子と麗奈、さつきと美玲と葉月の9人である。全員女の子だ。奏がすさまじく可愛い。

 これ、作品を知っている人ならわかると思うが、緑輝と奏だけ異色で、作中でほとんど絡みがない。

 去年は左から、優子と夏紀、麗奈と久美子、葉月と緑輝、みぞれと希美だった。久美子たち4人は近い配置になっていて、それぞれが絡みの多い組み合わせになっていた。

 今年は、もし描くとするなら、緑輝と求、奏と梨々花にするべきだった。年末に発売されたカレンダーは、久美子と麗奈と奏と梨々花の4人のイラストで発売されたが、いざ映画が公開されたら、まさかの梨々花の出番なし。

 『リズと青い鳥』を見ずに『誓いのフィナーレ』を見た人は、カレンダーの一番右にいた女の子は、一体誰だったのか感がとても強かっただろう。原作を読めば、奏とペアにするなら梨々花だとわかる。

 梨々花がいなければ、奏は久美子と麗奈と3人でまとめればよかった。奏と麗奈は特に絡みはないが、前述のカレンダーでも一緒にいたし、メガミマガジンの付録のウェディングドレスのイラストでも3人で一緒にいた。奏は『誓いのフィナーレ』の主役であり、この3人の組み合わせは不自然ではない。

 どうしてこうなったかと言えば、求を描かなかったからだ。全員女の子にしたかったのだろう。『誓いのフィナーレ』は明確に久美子と秀一の恋愛を描いていたが、結局イラストでは久美子と麗奈で、秀一は出てこない。

 原作者の描きたいものはともかく、きっと何が一番求められているかがわかっていて、その結果男子を排除し、一人浮かんだ緑輝を奏と組ませたのだろう。もちろん、緑輝と葉月、さつきと美玲でもよかったと思うが、チューバは3人で仲良くしているというのが、『誓いのフィナーレ』の大切なテーマだ。これは外せない。

 ちなみに、年末のカレンダーは、1~6月は上記の4人、7~12月は緑輝、葉月、さつき、美玲に、求も描かれている。今回の京阪もそれでよかったと思うのだが、求は描かれなかった。人気がなかったのもありそうだ。私自身、客観的にそうするべきだったと言っているだけで、求は好きではない。

 それにしても、今年の京阪のイラストの奏が死ぬほど可愛い。コラボ期間中に宇治に行ったことがないのだが、今年は黄檗駅に展示されるらしい等身大パネルを見に行きたいと思う。

 

 ところで『誓いのフィナーレ』だが、今ひとつ京アニのやる気が感じられない。

 例えば『リズと青い鳥』は公式設定集なる本が発売されたが、今回の『誓いのフィナーレ』はその手の本が何一つ発売されない。

 『リズと青い鳥』は映画の半券のキャンペーンがあったが、今回はそれもなかった。

 思うに、久美子が2年生の物語は、希美とみぞれがメインで、久美子自身の物語としては、「全国に行けなかった」という1行以外、何もないのだろう。だから、この作品で「全国に行けなかった」という事実だけ描いて、次の3年生編に魂を注いでくる気がする。

 2年生編で起きるあれこれは、すべて久美子に直接関係のないことばかりで、久美子は仲裁に走り回っているだけである。1年生編や3年生編のような、久美子自身に関する事件がほとんど何も起きない。

 『誓いのフィナーレ』は、『響け!ユーフォニアム』というシリーズの中で、最も不遇な作品だった。それは3年生編がまだ作られていない今でも断言できる。アニメはまだでも、原作はもう完結しているから、展開は知っている。

 残念なのは、そのせいで久石奏という魅力的なキャラが、じっくりと描かれなかったことだ。そもそも奏は過去すら原作の設定から変えられてしまった。親友も登場しなかった。

 3年生編に奏はもちろん登場するだろうが、主役は黒江になるだろうし、奏の問題は2年生編で解決してしまっているから、出番も少ない。そして、『誓いのフィナーレ』は画集の類も出ない。

 顔面偏差値は全キャラの中でトップクラス。声優はあの雨宮天。なんというかもう、キャラの無駄遣いである。

 今までの作品で大して物語の本筋に絡みもしなかったキャラとの唐突な恋愛を描く尺があるなら、もっと奏の内面を、過去を変えずにじっくり描いて欲しかった。

 『誓いのフィナーレ』はそういう意味で本当に残念な作品だった。