希望のない世界から

消化試合を生きる

希美はそんなに気にしていないと思う

響け!ユーフォニアム 決意の最終楽章・後編』が発売された。

とりあえず最初にエピローグとその前の10ページくらいを読んだら満足してしまい、他はまだピラピラとしか見ていないのだが、南中組の「今」が少しだけ描かれている。

その中で、83ページにこんな記述がある。

座席の背もたれに腕をかけたまま、希美はしみじみと言葉を吐いた。漏れる吐息には深々とした感慨と、それ以外の何かが混じっていた。

これ、本当に「それ以外の何か」は混じっていたのだろうか。

前からずーっと思っているのだが、『響け!ユーフォニアム』は久美子視点の小説なので、久美子が見た世界、久美子が感じた世界が描かれている。

だから、希美はいちいちみぞれに対して嫉妬しているような記述がある。

響け!ユーフォニアム2』の152ページ。

先輩、本当は嫉妬してたんじゃないですか?

これが久美子の根底にある。だから、常に久美子は、希美の言動に嫉妬を感じている。

同、266ページから267ページのくだりを読めば、希美は本当にただ、みぞれが頑張っていたから声をかけなかっただけで、みぞれがハブられたと思っていたと知って焦る。

これがすべてだ。

希美にとってみぞれは大した存在ではなく、特別な友達でもない。 みぞれはそのことを悲しんでいる。そういう話が、久美子のモノローグによって、だいぶ違う話にミスリードされているように感じる。

これは『第二楽章』や劇場版『リズと青い鳥』の影響で、本当に嫉妬していたような展開にされてしまったが(だから2巻で一度片付いたはずの問題が、『第二楽章』で再浮上する展開になってしまった)、少なくとも大学に入ってもなお引きずっているとは思えない。短編の記述などを見ても、むしろ希美はそんなにみぞれのことを気にしていないと感じる。

希美は希美なりの音楽の道を見つけて歩いている。いつまでも嫉妬していると感じるのは、それこそ2巻152ページで久美子が感じた通り、希美への侮辱だと思う。

響け!ユーフォニアム』という作品は、希美の扱いがひどいというのは色々なところで言われている。もちろん、結局全国に行けずに終わったり、新山に相手にされなかったり、状況だけでも可哀想だが、この久美子の感じ方がさらに希美を可哀想な存在にしている、そんな気がしてならない。

久美子視点の小説だから、天気が良くても、久美子が「今日は雨が降りそうな空だ」と思えば、読者は曇り空を想像する。

作者が、久美子は100%正しいと思って書いているのか、それとも「本当は違うけれど、久美子視点だからこう書く。でも、あくまで久美子がそう思っただけだからね!」みたいな気持ちで書いているのか、少し気になる。