希望のない世界から

消化試合を生きる

『リズと青い鳥』は百合なのか?

 個人的には『リズと青い鳥』は百合ではないと思っているのだが、そう言ったら近しい人間から、「ではお前にとって百合とは何か」と問われた。

 自分はハッピーエンド主義である。悲しいこと、つらいこと、上手くいかないこと、別れ、病気、死。そういったものは現実に溢れているから、それで十分。二次元には求めていない。

 だから、両想いであることが前提である。片想いや失恋、すれ違い。そういう作品を否定はしないが、自分は好きではないし、報われていないのに百合なのかと言われると首をひねってしまう。

 例えば、あなたが女性の異性愛者で、同性愛者の女性から告白されて断ったとき、その関係を百合だと言えるのかという話。例が極端かもしれないが、ニュアンスとしてはそういうことで、片方の想いは確かに同性愛だが、二人の関係性は特に百合ではないと思う。

 『響け!ユーフォニアム』という作品は、基本的にはすれ違いの物語だと思っている。

 みぞれは希美を好きだが、希美の方ではみぞれに対して特別な想いはない。

 梓とあみかにしても、なんだか百合っぽい雰囲気で始まるが、物語は梓が芹菜となんとなく仲直りして終わる。梓に依存していたあみかは、自立して適度な距離感で梓と付き合っていく。希美とみぞれと同じ構図だ。

 久美子と麗奈にしても、久美子は秀一と付き合うし、麗奈は元々滝先生が好きで、二人には友情以上のものはなく、その友情も久美子は暗に高校を卒業したら終わってしまうと感じていることが、地の文で繰り返し書かれている。

 優子と夏紀は単なる友情以上のものは一切ないし、作中で唯一百合だと思われるあすかと香織も、あすかの方がどう思っているのかいまいちよくわからない。

 『リズと青い鳥』も含めて、『響け!ユーフォニアム』という作品は、元々百合を取り扱った作品ではない。同性に対して恋に近い想いは散見されるが、それが報われることはない。

 誤解を恐れずに言えば、「そういうのはいいから依存をやめて自立しろ」というのが、この作品のテーマであるとすら感じる。

 『リズと青い鳥』の感想がTwitterでよく流れてくるのだが、おおむねその切なさがいいという。かみ合わないもどかしさがたまらないらしい。まったく理解できない。

 前にとある出版社の編集長が、「男性はバッドエンドに耐えられないが、女性は割と寛容で、女性向けならそういうのもあり」みたいなことを言ったと話題になっていた。

 これはさすがに乱暴な論だが、Twitterを検索していると『響け!ユーフォニアム』や『リズと青い鳥』を絶賛しているのは女性が多く感じるし、その展開が耐えられずに、ひたすらユーフォキャラのラブラブな百合物を書き続けている自分の読者は男性が多い。

 Pixivで小説を読む層は、女性向け作品の方が圧倒的に人気なことから、女性の方が多いと思われる。ユーフォ界隈も女性の読者がたくさんいるのだが、自分の作品をツイートしてくださるのはほぼすべて男性だ。

 原作の『響け!ユーフォニアム』は恐らく元々女性向けの作品なのだと思うが、TVアニメの『響け!ユーフォニアム』および映画『リズと青い鳥』は、どの層をターゲットにした作品なのだろう。

 相変わらずどこか百合作品をミスリードしているように思えるが、果たしてこの作品は百合が好きな層に受けているのだろうか。