希望のない世界から

消化試合を生きる

御嶽でのこと

先日、御嶽山に登った時のこと。

ロープウェイで七合目に着いたのが11時だった。

そして、その日のロープウェイの営業時間は16時30分までだった。

 

体調は悪くなかったが、睡眠不足と高山病っぽいものが合わさり、だんだん頭が痛くなってきた。

登頂は13時30分だったと思う。

山頂で写真を撮ったり、休憩したり、おにぎりを食べていたら、14時を回っていた。

まあ下りは大丈夫だろうと思っていたが、二ノ池で遊んでいたら、嫌な時間になってきた。

その上、頭痛と足の疲労がピークに達して、登りよりも遅いスピードになってくる。

 

どれくらいの頭痛だったかと言うと、すぐに頭痛薬を買ったり、サービスエリアで少し寝たり、結局運転を断念して仲間にハンドルを任せるレベルで痛かった。

気持ちが悪くて食事など喉を通りそうもなかったし、薬のために飲んだ水で吐きそうになった。

そんな状態だったが、山では泣き言を言っても仕方がないので、下りるしかない。エクストリームなスポーツなのだ。

ざくざく下りて、結局16時20分くらいにロープウェイに滑り込んだ。

 

下りの途中で若いカップルを追い抜いた。

彼氏は平気そうだった上、「最悪ロープウェイはしょうがないから」と優しい言葉をかけていたが、彼女の方は「もうダメだ」とぶつぶつ言いながら、ふてくされたように歩いていた。

自分から見たら、悪態をつく元気もあるし、足取りもふらついていなかったし、疲労は事実だろうが、「頑張る気がない」ようにしか見えなかった。本当に歩けない人は歩けない。

彼女はああすることで、彼氏に何を求めていたのだろう。

まさか救助を呼ぶような状態ではないし、泣こうが喚こうが結局自力で下りるしかないのだから、歯を食いしばって七合目まで下りて、文句を言うならその後にした方がいいに決まっている。

もっとも、歯を食いしばって七合目まで下りたら、それまでの苦労などどうでもよくなるだろうが。

登山とはそういうものだ。

 

あの後二人がどうしたかはわからないが、彼氏はあのまま優しくし続けられたのだろうか。

自分なら「文句は後で聞くから、今は間に合わせる努力をしろ」と言いそうだ。

一番衝撃的だったのは、「最悪ロープウェイはしょうがないから」という彼氏の一言。

ロープウェイありきですべての行程を考えていた自分は、彼女ができる類の人間の大きさを思い知らされた。

彼女の愚痴と甘えに付き合ってだらだら六合目まで下りて、しかもその後恐らく一人でロープウェイ乗り場まで車を取りに行くとか、有り得ない。

 

自分には彼女ができない。

社会は上手く成り立っているのだ。