希望のない世界から

消化試合を生きる

挨拶について

夏に一人でドイツに行った時のことなのだがね。

なぜ一人で行ったのかって? 友達がいないからに決まってんだろ。言わせんなよ、恥ずかしい。

で、リューデスハイムというライン川沿いにあるワインで有名な街でゴンドラに乗った。

このゴンドラは広大なブドウ畑の上を通り、ニーダーヴァルトという丘まで続いている。

時間にして10分ちょっとだったか覚えていないが、ちょうど向かいから下りのゴンドラで大量の女の子の集団がやってきた。日本でいうと小学校高学年くらいだと思う。

その子たちがだ。

上りのゴンドラ、つまりこちら側の通り過ぎる人みんなに、みんながみんな手を振りながら、「Hello!」と元気に挨拶をして行く。

みんながだ。

最初はこっちも手を振りながら挨拶を返していたが、だんだんと疲れてくるくらいに、みんながだ。

センセーショナルな出来事だった。

日本では、言うまでもなく、滅多に知らない人には挨拶をしない。自分の経験では、するのもされるのも登山の時くらいだ。

ましてや小学生の女の子に挨拶しようものなら、あっと言う間に地域の不審者情報に掲載されるだろう。夜道で自転車で女性を追い抜いただけで通報されるご時世だ。

日本は病んでいる。などと結論付けると、一部の人の反感を買うだろうから、「自分はドイツで経験したことの方が清々しくて気持ちよく感じる」と書く。

20年前、自分が子供の頃は、もう少し他人との距離が近かったように記憶している。

あるいは大人の視点では、今も昔も変わっていないのだろうか。

当時子供だった自分にはわからないが、女の子を見ると挨拶するどころか、むしろ目を背けたり別の道を歩く努力をしなくてはならないこの国を、比較的残念に思う。

女の子が知らないおじさんに挨拶できる国になればいいのに。

ふへへ。